『混乱』
着けば少女が居た。だが、とき既に遅し。防御に間に合わず、壁に激突した。
「き…貴様、ただも…の…では、ない…な」
「咄嗟に急所を外す。伊達に修羅場を潜り抜けた訳では無いわね…」
―カグツチ。少尉が自分を探してうろついているのを、繁華街で見かけ、面倒ごとにならぬ様に…と、上へ目指した。そして、着いたのは…。
「兄さんは…いない…のか?」
兄を探して支部を出たは良いが、中々手がかりが見つからずにいた。図書館に着いたは良いが、何があった訳でも無い。
「…無駄な事をしてし…」
「そうでもないわよ…えいゆうさん」
変わってノエル。繁華街を出た後、偶々ラグナを見かけて戦闘を仕掛けるも、交渉を持ち出したラグナの言い分を聞き、一時休戦を承諾した(いずれにせよ、図書館目指すため)。さすがに賞金首で統制機構の人間である。人目を憚りながら、図書館を目指した。
「しかし、何とか着いたな」
「道中、変なイカルガの人や赤鬼…厄介でしたよね」
ここへ着けば、ジンに会える可能性が高い。そう思ったが、気配が無い。ラグナも妙な気分に陥っていた。すると、傘を持った少女がいるが、背後には…。
「少佐!」
「ジン!」
両者、気を失って倒れているジンの姿を見て驚かざるを得なかった。それよりも…、
「強さは上出来だったけど、もう少し静かであって欲しかったわね」
「おい、ウサギ。てめぇ、何のつもりだ」
「何って退屈だったから、抜け出しだけよ」
怪訝そうな顔をするラグナだが、レイチェルは何処ふく風。対するノエルは、どうして良いのか戸惑うばかり…本部へ連れ戻すことが目的なのに…何故…。
「貴女、震える必要性は無いわ。でも、彼の身柄は少しあ…」
その直後に軽やかに氷を避けるレイチェル。刀を杖代わりにしながらも、起き上がるジンの姿があった。
「じゃ…邪魔立て…するな…ら…斬…る」
「ふ~ん、やるじゃない。まぁ、良いわ。今回は引いてあげる」
「マテや、こらぁ!」
猛スピードで駆けつけ斬撃を繰り出すも、彼女は何処へと消えてしまった。
「少佐…また…」
再び気絶してしまったジンにケープを毛布代わりにかけるノエル。暫く目覚めないだろうと実感した。だがラグナは一層と不機嫌面になった。ノエルは疑問に思うも、触れないようにした。色々事情があるだろう、でも今は、ジンの連れ戻しが重要だ…と。だが、ラグナの身柄拘束も重要である。色々と思惑が飛び交う中、赤い影が見えた。先ほど出会った街医者である。
「あんた…確か繁華街の…」
「そうよ。私が手当てするから、先に行ったら?」
「…本来なら、こいつにも色々聞きてぇけど、今は後回しだ。ジンを頼むぜ」
ラグナはその街医者であるライチにジンの看病を任せて、目的地へ足を運び始めた。
「何で、お前まで?」
「私も色々知りたいんです…今回の一件、凄く嫌な予感がするんです…」
「勝手にしろ…だが、フォローむずいぜ」
ノエルの覚悟を悟り、照れくさそうに答えるラグナに彼女は元気よく歩んだ。
「…っ!…ぐぅ」
起き上がれば、病室…。それも中華風。図書館で少女の奇襲を受けた記憶から一切無い。そして、何故か女医がいた。
「あら、貴方ってジン・キサラギね?」
「…あぁ。で、何で僕は、ここに…?」
「赤い服で銀髪のお兄さんに貴方の事を任されたの。あ、服はあの棚にあるからね」
それを聞き出せば、誰であるかは見当がついた。そう、兄のラグナである。自分は会う為にカグツチまで赴いた筈が…すれ違いとなってしまい、苦い表情を見せた。起き上がれるほど、傷は完治していないのが歯痒かった。
「じゃあ私は去りますから、好きにしてもいいわよ」
「…それが出来れば、僕は即刻図書館へ向かっている」
翌朝。ライチは起床して、ジンの様子を見に行ったが、姿は無かった。手紙には礼を書いた内容であった。
「ちぃ…まだ治らないか。だが、止まるわけには行かない…」
ジンは再び、兄に会うべく、図書館を目指した。
【後書き】
やらかした感じです。すんません。色んなキャラ出したなぁ…私。最初に書いたSSの内容を少しは反映させてます。
そして初めてジン主軸じゃない。
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