燈月さんから61200番リクエスト

 リクエスト内容は「ジンの手当てをするラグナ」です。
 此のたびは、有難うございました。ラグナお兄さん、しっかり!



カグツチ支部の地下からラグナは今まで来た道を走って戻っていた。
地下ではノエルやレイチェルも一緒だったが、ノエルが腰が抜けたとかなんとかで動けなくなってしまった。しかしラグナにはすぐに戻りたい理由があったし、正直自分自身もヘトヘトで人一人を抱えて走るような自信はなかった。なのでレイチェルにノエルを預けて一人で走っているのだ。
走りながら頭を占めるのは自分が傷付けて置き去りにした、たった一人の弟のこと。
今まで、というか、ついさっきまでは弟が、ジンが全て悪いのだと思っていた。だが、あの姿…テルミだかハザマだかを見て思い出したのだ。まず自分の腕を切り落としたアイツ。そしてジンが自分を刺す横で至極楽しそうに笑っていた…、ジンと同じような笑みをその顔に浮かべて。
多分アイツが全ての黒幕で、ジンが悪いわけではなかった。ジンに聞かなければならないことは山程あるし、まだ許しきれていないのも事実だ。けれど、今は、ただ純粋に、兄として生きていてほしいと思えた。
もう、たった一人の家族だから。
走って、走って、ようやくジンと戦った場所まで戻った。
頼む、まだ、居てくれ…!
そんな思いで辺りを見回した。そして、少し端に寄った場所に横たわる青を見つけた。
「ジン…!」
慌てて駆け寄って、そっと抱き上げた。どうやらただ気を失っているようだ。しかし怪我は酷そうで、早く手当てしてやらなければと思う。戦った時は自分は割と手加減をしなかったものだからジンの切り傷や打撲が少し目立っているようだった。
しばらくしてノエルとレイチェルが上がってきたのでノエルにこの支部で手当てできそうな場所を教えてもらい、移動した。
*****
未だ気を失っているジンをベッドへ横たえて慎重に手当てを施す。
ノエルやレイチェルには席を外してもらったし、レイチェルに手を回してもらってこの部屋や支部には人が立ち入れないようになっている。
一通り手当てが終わって、そっと毛布をかけた。
そして、ゆっくりと頭を撫でる。
「…ジン…ごめんな……」
未だに眠るその顔はまだどこか幼さを残していてあどけない。まるで、昔のままだ。
今更だけれど、また、一緒にいたいと、いてやりたいと願う。
目が覚めてもジンは変わっていないかもしれない。またあの狂気に満ちた瞳で自分を見て切りかかってくるかもしれない。
でも、今度は傷付けたりなんかしない。受け止めてやる。自分にできることはなんだってする。
だからどうか昔のようにいられたらと強く思った。
完全に憎しみや恨みが消えたわけじゃない。でも、もうコイツを殺してやりたいとも思えない。
しばらく頭を撫でていたらジンの目がそっと開かれた。
ぼーっとしていて焦点があっていない、それでもゆるゆるとした動作で視線だけがラグナを捉えた。
「ジン…大丈夫だから、もう少し寝てろ……」
いきなり飛びかかってこないかと内心で心配しつつ極力優しい声音でそう囁いてやると安心したようにまたゆっくりと瞼を閉じた。
これからだ。
ラグナは強く決意する。
これから、変わる。変えてみせる。この現状も何もかも。全ての目的を果たして、また一緒にいられるように。
頭に置いた手はそのままで、ラグナの瞳には強い意志と決意が宿る。
こんな世界、全てぶっ壊してやる…!
(物語は、ようやく次の舞台へ、)
END

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