リクエスト:争奪戦
です。結末が良かったです。
笑顔にしたいの、だぁれ?、
「【第一回!冷徹少佐の氷を溶かせ!笑顔にできるのだぁれ?】開催っス~!ってうぉわっ!?」
レイチェルの使い魔であるギィが高らかに叫べばどこからともなく銃弾やら何やらが飛んでくる。
「冷徹だなんて…たしかにちょっと厳しいですけど…少佐に失礼ですよ!」
「そうよ!ジン兄様はお優しい方よ!」
「優しいというか…からかい甲斐はありますよねェ、」
「あー?ひっついてきてメンドクセェだけだろ、」
(((ひっつかれてみたい…)))
「アナタ達、準備は良くて?」
ワイワイと騒いでいると退屈そうなレイチェルからの一声で静まる人達―ラグナ、ノエル、ツバキ、ハザマ―。
何故この人達が呼ばれたかといえばこの高貴なお姫様の退屈しのぎの為に過ぎない。
「つーか、こんなことしてていいのかよ、本編的に」
「本編無視に決まっているでしょう?馬鹿ね。まぁこんな話をしていても仕方ないわ、本日のメインディ…ではなくて、賞ひ……んんっ、失礼。本日の主役よ、ヴァルケンハイン、」
「はい、準備は全て終わっております、」
レイチェルが声をかければどこからともなく老人にしてはやけにしっかりとした体躯をしている執事が現れた。
その腕の中には赤いリボンで上半身をグルグル巻きにされたジン=キサラギが。
「くそっ!離せ!こんなことをしてタダで済むと思うな…!」
「相変わらずうるさい子狗さんだこと。でもこれはこれで躾甲斐が…、とりあえず本題に行きましょうか、」
レイチェルの口から時折物騒な発言が出るものの、ジンは地面に座らされ大会?が始まる。
内容は至って簡単。ジンを笑顔に出来た人の勝ち。勝った人にはジンをプレゼント。そんなノリである。
ちなみにこれはレイチェルに一番最初に捕まったのがジンだっただけで、ラグナだったらラグナが賞品になっていたところである。
「さ、じゃあ始めてちょうだい。」
「え、えと!じゃあ私いきますっ!」
先手を行くのはノエル。気合いを入れた面持ちでジンへ向かうが、あと1メートル程のところでノエルの足元に小さめな氷の壁が作られる。
越えられないことはないが…
「そこから先に入ってみろ…凍らすだけでは済まさんからな……」
「うっ…あ、あのっ少佐っ」
「遠回しに引き返せと言ってるのがわからないのかこの障害が!」
「ノエル、論外ね。次はとりあえず隣に立つところまで頑張ってちょうだいね、」
ノエル泣く泣くリタイア。
戻ってきたノエルと入れ替わりでジンの下へ行ったのはハザマ…というか中身はテルミなのだが。
ハザマはまぁジンの前まで近寄ることはできたが何を言ってもジンは反応を示さなかった。
「時間切れよ。次、」
「仕方ないですねぇ…(クソ吸血鬼が…!うぜっ)」
次に向かったのはツバキだ。
ここでジンに異変が。
先程までとやや変わってきて、どうも雰囲気が少し優しくなったようだった。
「ジン兄様…」
「ツ、ツバキ…!」
「ジン兄様、この後一緒にお食事しませんか?私久しぶりに兄様とゆっくりお話しもしたいですし、」
「え、あ…ああ…」
結局時間切れでツバキの番は終わってしまいジンがにこやかな笑顔になることはなかったが、それでもかなり良い方だった。
そして…、
「次は俺かよ…」
最後はラグナが渋々と近付いていく。
かなり嫌なのだがここで逆らえば何があるかわからないからだ。
「…ジン、」
「、兄さん…!!」
ジンの顔に笑顔が広がる。が、
「おい、笑ったけど、」
「純粋な笑顔じゃないでしょう?無効よ、」
その笑みは純粋なものとはかけはなれていてレイチェルからのOK判定はでなかった。
結局そのままジンは変わらずでラグナも時間切れ。どうしようかと悩んだのはレイチェルだ。
「大体予想はついていたけれど、アナタ達ダメダメね、全然ダメだわ」
その言葉に各々の反応を見せる。
「まぁ…私が決めるわ。今回の勝者は…そうね……ツバキ=ヤヨイ。アナタにするわ」
「わ、私!?」
皆が皆ラグナだろうと思っていたところでまさかのツバキが選ばれた。
「な、なんでこの嬢ちゃんなんだよ!」
「だってえいゆうさんの素直さが一番出ていたようだったし。それにラグナとではお茶をするどころの話じゃなくなってしまうでしょう?」
レイチェルにそう言われてしまってはラグナは渋々と下がるしかなかった。
「さ、じゃあ行きましょうか、」
「え、あの…」
「私の家でお茶をしましょう。もちろんえいゆうさんも一緒よ、」
「え、えっと…よろしくお願いします、」
「素直でよろしい。えいゆうさんも彼女となら文句はないでしょう?」
「僕は、別に、…」
そう言ったジンを再びヴァルケンハインが抱えてレイチェル一行は闇へと消えていった。
そして密かにリベンジを誓うのは残された人たち。
勝者のツバキと、ジンはレイチェル邸で穏やかにお茶を楽しんだとさ。
完
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