ツイッタでやらかした子供化ネタ。全員生存のifとか無理ある設定です。ご了承ください…では。
◇第1章「距離」 第3部
―第35日目
コンボイを元の体に戻す手がかりは未だつかめていないものの(時間経過は眉唾臭いというのがサイバトロン軍全員の弁)、今まで負い目に感じていたことを打ち明けてから大分つらそうな表情を見せることはなくなり、マイクロンやラッドたちと遊び、ラチェットの手伝いに手掛かりを探していた。
ラチェットの手伝い以外で部屋から出ることはほとんどなかったが、最近はラチェットだけではなく、ジェットファイヤーやホットロッドの手伝いをするようになった。専門書を読みつつも、シルバーボルト達の訓練風景を見て応援していた。
「プライム!一緒に読む?」
とコンボイが尋ねれば、嬉しそうにうなずくプライム。ラッドとアレクサは学校があるということで10日ほど前に帰ってしまったがその間、地球の物語や小説に古典のデータをダウンロードして、読んでいた。専門書を読み続けるのはかなり大変なので、結構息抜きにもなっていた。とくに庭で読むのは一番落ち着くのだ。
「地球の物語を読むのは面白いから、ついつい夜更かししちゃう…」
眠たい目をこすりながらコンボイは物語を読み始めた。
丁度修繕作業も一区切りついたので、休憩しようとしていたホットロッドとスタースクリームは庭で読書しているコンボイを見かけた。
「プライムと一緒だと和むな」
「あぁ。あれ?」
ホットロッドはコンボイの頭部を見つめ直していた。何か動いているみたいだ。
「どうした?」
「司令官のアレ、動いていないか?」
「は…?」
恐る恐るコンボイのある部分を指さすホットロッドの視線の先はコンボイのあのとがったアンテナだった。別にアンテナ自体は珍しくないだろう(ちょっと形は変わっているかもしれないが)、とか思っていたがすぐに分かった。動いている。可笑しいな、今まで動いている所を見たことがない。
「髪の毛が長いにもほどがあると思うけどなぁ、このお話」
プライムも同じことを思ったのか、頷いていたのだ。でもって、アンテナも動いていた。
「動いているな、あれは」
「だろ?」
そんなある日の午後。この後、ラッドとアレクサに話したら犬という動物のしっぽみたいだという返事がきた。
―第43日目
この日はホットロッド達と星空を見ることになっていた。地球から見た夜空はとても綺麗で新鮮だった。が、故郷から見た星空は戦いに明け暮れていた関係で余裕をもって眺めたことはなかった。今はこうして平和なひと時を過ごしており、今までの事を思えばゆっくり眺めることは可能だ。
星空を眺める数時間前。概ね休憩時間。いつものようにコンボイはプライムを連れて、ゆっくり過ごしていた。今日はホットロッドも一緒にいた。
「聞いてくださいよ、司令官。グラップの奴、瓦礫撤去するはずなのにうっかり転んだ衝撃で瓦礫が砕かれて増やしちゃったんですよー」
「ちゃんと掃除しただろうが!」
「お前の不器用なところ、どうにかしろ」
「兄貴、笑っていましたよね?凄く」
「全くだ!本当に転がるほど笑うなんて、あんまりじゃねぇか!」
「まぁまぁ」
ホットロッドはこうして仕事以外にも日常会話で面白かった事をいろいろ話し、また時間が空いたときは一緒に遊んでくれた。シルバーボルトやグラップの訓練場にも顔を見せていた(シルバーボルトは気を引き締めるために偶に来てほしい、とお願いされたのだ)。ステッパーは相変わらずオペレーターと暗号解読の仕事に勤しんでいる。いつの間にか戦闘ではなく、こちらがメインになっていた。ホットロッドは時折茶化すことがあるが、毎回コンボイは窘めている。
「司令官が訓練場に来てくれると、程よく気が引き締まるので助かります」
「そう?あ、でも無理させないように…ってラチェットが言っていたよ」
「分かっていますよ(本当に司令官の親みたいだな)」
そんなこんなで休憩時間も終わり、各自の仕事に取り組むために休憩室を出たのだった。
その日の夜。星空を見るためにスタースクリーム達は集まった。一段と綺麗に見える気がした。
「この景色を守るために戦っていたんだよね」
「ですね。司令官、そういえば地球で見る夜空は綺麗でしたよね」
それは、まだマイクロン争奪戦に明け暮れていたころ。程よい骨休みになると思いサイバトロン軍全員で星空を眺め、星座を探すのに夢中になっていた時があった。あのときはラッドたちも一緒だったな、とか思い出した。
「うん。星座探すのは楽しかったよ」
「ですよねー。ラッドなんて熱心に教えていましたから俺たちびっくりしましたよ」
「そういやラッドたちは元気でやっているかな」
今はここにいない彼らの事を気に掛けるジェットファイヤー。偶にモニター越しの会話をするが、中々会えるわけではなかった。スタースクリームは元気だろ、とさらっと答えれば、
「アレクサ…」
「しばくぞ!!」
ジェットファイヤーの一言に怒りを爆発させたが、コンボイの一言。
「喧嘩はだめ!」
正に鶴の一声。二人とも、正座してコンボイに謝った。これにはホットロッドは当然のこと、ラチェットもデバスターも感心していた。
「副司令も航空参謀もコンボイの前では形無しだな」
「師匠…」
小さくなっても司令官は司令官なのでした。
―第55日目
「コンボイ、話がある。あ、私の膝上に座ったままでも構わない」
「どうしたの?」
「私は前にお前に話そうとして言えなかったことを話す」
そういえば、ジェットファイヤー達が来て話せなかったことがあるのを思い出した。確かに何かな?と思っていた。
「言えなかった事?」
「そうだ。あの時は向き合えずにふさぎ込んでいるお前に対して、このままでは何も変わらない…そう言いたかったんだ。すまないな、すぐに言ってやれなくて」
「ううん、有難う。本当のこと言ってくれて。まだ完全にって訳じゃないけど、これからも自分の気持ちに正直になれるように頑張るよ。それにスタースクリームやジェットファイヤー、ホットロッド、ラチェット、デバスター、シルバーボルト、グラップ、ステッパー…皆、僕の事を心配して、この体を何とか戻そうと手がかりを探してくれるし、寂しくならないようにって一緒にいてくれるのが嬉しいんだ」
以前なら迷いに迷ってふさぎ込んでいたであろう、しかし今はまっすぐ向き合おうと努力しているのがよく分かる。あれだけ負い目に感じて距離を置いていた姿が嘘のようだ。尤も謙虚な辺りはコンボイらしいと言えばらしいな、とスタースクリームは微笑みながらコンボイの頭を撫でた。
「でも、スタースクリーム。君の気持ちをちゃんと理解していなかったから、サイバトロンに居づらかったのはごめんね。でも信じる気持ちは嘘じゃなかったよ」
「分かっている。大体その件は私自身もスラストの言葉に乗ったのも問題だ。お前がそこまで自分を責めなくてもいい」
ホットロッドから聞かされたことだが、コンボイは自分を迎え入れた理由は両軍の和解の第一歩との事だ。デストロンである自分を受け入れようとする懐の深さには感心したが、様々な出来事を経てコンボイの事はいつしか信頼できる指揮官だと素直に思っていたし、ホットロッドもいきなりグラップの仇だと殴りかかってきたが、裏切られたのに仲間と信じてくれたのは嬉しかった。ふと彼は思った。コンボイもだが何故ホットロッドの事も受け入れていたのか。そうだ、あいつはコンボイに似ているのだ。愚直なまでに仲間の安否を気遣い、バカ正直に相手を信じようとする、とにかくこの二人はまっすぐなのだ。だからこそ、コンボイもホットロッドに何かと託していたのだ。
「お前とホットロッドは似た者同士だな」
「そう見える?だったら嬉しいな。サイバトロンのリーダーって技量じゃなくて人柄とか正義感とか精神論な部分が強いの。ホットロッドって無茶するけど真っ直ぐで相手を信じる事から始める優しい子だよ。だから次期リーダーには彼を推しているの」
「お前がそこまでいうのだから大丈夫だろう」
スタースクリームとの会話を一部始終聞いていた者がしっかりいた。
(すっかり膝上がお気に入り…しかし司令官は司令官だな)
(司令官…俺頑張ります)
(じゃあ早速、私が遠慮なく鍛えるぞ)
ラチェットの表情がマジすぎて、一瞬固まったホットロッドにジェットファイヤーは笑いを必死でこらえた。
「聞いていたの?」
突然、ドアが開いた。その先にいたのは…コンボイと彼を抱えているスタースクリームである。
「盗み聞きか…ほほぉ」
「待ってくれよー。司令官に渡したいディスクが…」
「問答無用!!」
コンボイをラチェットに預けて、ジェットファイヤーとホットロッドにお灸をすえるべく、全速力で追いかけるスタースクリームと全速力で逃げるジェットファイヤーとホットロッドの鬼ごっこが始まった。
「大丈夫…だよね?」
「問題ないですよ」
☆後がきの跡
1章はこれでおしまいです。
これで何とか明るくあどけない司令官書けそうです。ちょっとずつ打ち明けていきます。司令官の可愛げをもう少し増やしていきます。
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