フォロワーさんへの捧げものです。女性向け描写があると思うので閲覧注意です。
彼女の名は小松殿こと稲姫。徳川四天王が一人、本田忠勝の娘にして真田家の嫡男・真田信之の妻である。夫婦仲はとてもよく、義弟の幸村とも仲良く楽しく過ごしている。彼女の旦那は真面目で優しいしっかり者だが致命的な欠点があった…そう、後の世で言うならブラコン。とにかく幸村命で彼の身に何かあれば容赦しないか過保護になる困った性格である。こんな旦那の実態見たら嫌になるだろうが、稲姫は逆だった…彼女も幸村が大好きで仕方ない幸村馬鹿になってしまったのだ。そんな彼女の楽しみとして真田兄弟のいちゃつきウォッチングがある…。
「稲ちん、また観察しているの…?」
「信之様の妻として、幸村の義姉として頑張るためよ。でもあの二人見ていると、なんだかほっこりするのよね」
「まあ、このご時世としては珍しく仲のいい兄弟だからねー」
稲姫はその日あったことを書き記しながら、くのいちと話していた。後の世で言うパジャマパーティをやるため、甲斐姫・早川殿・直虎も招待した。
「信之様も幸村も早起きだけど信之様は幸村の寝顔見たさに早起きしていると思うわ」
「うん、わかる…というか、それ目当てで忍んでいること多いよ」
くのいちは引きながら返すと、直虎。
「仲のいい兄弟の範囲を超えていませんか?」
「信之様って、どんだけ幸村様大好きなの?」
「もうそれ以上の感情抱いていたら怖いわね…」
さらっと爆弾投下する早川殿に一同ひきつった笑顔を見せた。ちょうどよく水を飲みに行っていたねねが戻ってきた。
「なんだか楽しそうだね」
―朝・幸村の部屋の前
稲姫は朝餉の支度を始めようと台所へ向かっていた時である。
「今日は兼続さまから貰った野菜を汁物の具に…」
と考えていたところ、幸村の部屋へ向かう信之を見つけた。
「信之様、おはようございます」
「おはよう、稲。今から幸村を起こそうと思うが稲も一緒にどうだい?」
「もちろんです。やっぱり弟は可愛いものですから」
朝っぱらから弟病炸裂かよ、この夫婦は。しかし周囲は言っても聞かないのを分かっているため、誰も突っ込まなかった…否、信之の仕返しは苛烈すぎるので誰も言えなかった。
「幸村はまだ寝ているな…やっぱり昔から寝顔は可愛いな」
「ん…あ、兄上…?」
もう少し寝顔を見たかったと残念がることもあるが、この寝起き状態も好きだと言い張る信之を稲姫は知っているため、黙っていた。というより、この夫婦は幸村の仕草なら何でも好きな困った夫婦。寝ぼけて急に甘えてくるなら鼻血が止まらないであろう。三成がいたら真っ先に気色悪いと突っ込むだろう。…おっと、それてしまった。未だに寝ぼけている幸村に抱き着くのもまた夫婦の日課だった。
「おはよう、幸村…ああ、今日も寝顔も寝ぼけも可愛いぞ」
「この時間は至福です…」
「く、苦しいです…」
もはや聞いちゃいねえ…。これが真田家の一日の始まりにして信之のブラコン発動第1幕でもあった。
「幸村様の寝顔…ちょっと見たいかも」
「貴女は本当に幸村様推すわね。でも確かに見たいかも」
「後は普段凛々しいけど、平時で見せる温厚な態度と柔らかい微笑みが良いのよ…それから信之様に見せる弟としての表情も良いわね」
えらく饒舌な甲斐姫に稲姫は大いに頷いた。
「その通りよ!甲斐、貴女の観点は素晴らしいわ」
「稲ちん…声抑えて…」
くのいちは稲姫に抑えるように注意した。
「ごめんなさい…。今日は幸村怪我しちゃってね…」
「信之様、顔だけ男の友達凄く睨んでいたなー」
―昼・真田家内の道場
屋敷で兄弟は左近や兼続と昔話をしていたところ、道場が騒がしかったため幸村は様子を見ると部屋を出て道場へ向かうとお約束のように喧嘩を始める3人がいたので止めようとした。しかし、清正たちに突き飛ばされた正則とぶつかってしまい、そのまま庭へ落ちてしまった。幸村に気づいた清正と三成は正則を突き飛ばして幸村を起こそうとした直後…、
「もー!仲良くしなさいって何度言ったら分かるの!」
ねねの怒号が響き、子飼い組は一斉に縮こまった。
ねねと稲姫が彼の手当てをしている頃、
「お前たちのそれはお約束に近いが、幸村を巻き込むことはなかっただろ。止めようとしていたぞ」
「う…」
客室で正座していた3人に吉継は遠慮なく突っ込みを入れていた。
「幸村も心配だけど…信之さんの方も心配ですな」
「左近…それを言うな」
兼続が空気を読まず、幸村への愛は偉大だと言い張れば子飼い組の容赦ない鉄拳が降りかかってきて、兼続はしばらく伸びたままだった。
同じころ、幸村は自室で大人しくて手当されていた。
「おねね様、幸村の手当て有難うございます。全く…三成達め…幸村にこんな怪我を…」
「いいのよ、うちの子たちの粗相はあたしが後で叱り飛ばすから。はい、幸村これで一通り手当終わったよ」
「ありがとうございます、おねね様」
「いつも手伝い感謝します」
ねねは真田家3人に笑いながら家族思いのいい子だね、と嬉しそうに頭をなでた。特に幸村の。これには幸村も恥ずかしそうにうつむくが、つられて信之も撫でた。
「お前はなんていい子なんだ…これほどけがを負っても誰も責めないなんて…私は今猛烈に感激している…いや、いつだって自慢の弟だ!」
「家族自慢ならあたしもしちゃうよ!信之もどんどんやって!」
「なら稲も!!」
なおこの後、ねねは看病を夫婦に任せてから子飼い組をこってり絞ることにした。
「だから足が痺れたーとか、ぼやいていたの?」
「色々とおねね様に絞られていたのは伝わるわね」
女性陣はこの騒動後に来たため、何の事かさっぱりだったがここで漸く把握した。夕餉の時は賑やかに食事していたが、ほとぼりが冷めたのだろうと思ったが、
「悲鳴が聞こえていましたが…まさか…三成さんたち…」
「信之様とおねね様は3人組呼び寄せてボコボコにした」
あーやっぱりね、と甲斐姫は呆れながら呟いた。
「まあ反省していたみたいだし、ねね分身+修羅付の連続攻撃で許したよ」
(それ既に処刑ものでは…)
そんな事言えるほど、直虎の心は強くなかった。
―夕方・夜
「義姉上、すみません。わざわざお膳を…」
「良いのよ。弟なら少しは信之様や私に甘えていなさい。それも立派な努めよ」
「稲の言う通りだ。私もここで食べるから安心しなさい」
「は‥はい。では、いただきま…っ」
幸村は箸を取ったが痛みが走ったため、落としてしまった。
「よし、私が食べさせる。それが良い」
「な…私はもうそのような幼子ではありませぬ!」
と反論するが、現に箸をつかめないのだから兄に頼らざるを得ないのは分かっていた。しかし、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
「信之様なんとお優しい…幸村、私は広間へ戻るけど信之様と仲良く食べるのよ」
と、幸村の頭を少し撫でてから稲姫は部屋を出たが、これは嘘。信之と結託して出たふりをして隣の部屋で観察する気満々だった。
「一緒に食べよう、幸村」
「うう…分かりました」
この日ほど、兄弟水入らずの時間が恥ずかしいと思ったことはない、と幸村は思った。しかし信之は逆にうれしそうだったのは言うまでもない。
「焼き魚から食べるか?」
「…お願いします」
稲姫は一通り出来事を語った。
「信之様…今日は一緒に幸村様の部屋で寝ているの?」
「布団担いでいたよ」
早川殿の質問にくのいちは即答した。今までの流れを思えばすぐにわかる。
「信之は本当に幸村大好きだよね」
「はい、あの兄弟愛は素晴らしいです」
「仲がいいのは分かるけど限度というものが…」
「突っ込みは禁止よ、直虎さん」
「そうそう。幸村様の寝顔は私も見たいなー。でも死にたくない」
「やめた方が良いよ」
こうして女性陣によるパジャマパーティはまだまだ続いていった。なお男性陣は男性陣で呑気に遊んでいたが途中で飽きてしまい寝てしまった。
一方、話に出ていた真田兄弟はというと…、
「お前と一緒に寝るのは久しぶりだな」
「こ、子供の時以来ですけど…その…恥ずかしいです」
「何を言うか、いつも抱き着いてきたじゃないか」
「ですけど…私は…眠くて…」
言い終える前に眠ってしまった幸村にまた信之は可愛いなあ、と思いつつちゃんと寝かしつけ少し寝顔を堪能してから眠った。
翌朝、起こしにやってきた稲姫と甲斐姫は幸村に抱き着いている信之を見て喜びの悲鳴を、幸村の事が心配になった三成は恐怖の悲鳴をあげ、またしても騒がしい一日が始まるのであった。
おまけ
兼続「信之殿、幸村の抱き心地は?」
信之「凄く良かった。弟は良いものだ」
三成「気持ち悪いわ、変態」
清正「お前朝から何を見たんだよ?」
三成「(ぼそっと)幸村に抱き着く信之」
正則「ぶほ!!まじで!!!」
左近「正則さん汚いですよ」
吉継「(それは弟病末期の流れだな…)この漬物は絶品だな」
稲姫「ありがとうございます。あ、おかずのお代わり一杯ありますよ」
甲斐姫「じゃあいただこうかしら」
早川殿「私も」
直虎「甲斐さん、凄くうれしそうですね」
くの「うん…兄弟の抱きつき見て興奮したみたい」
ねね「ほらほらたくさん食べて元気出しなさい!」
信之「幸村、朝餉はしっかり食べなさい」
幸村「は‥はい…(早くけがを治さないと…この恥ずかしさは脱せない!)」
信之「いっその事、私が全部お前に食事を食べさせる!」
幸村「幸村はもう、そこまで子供じゃありません!あ…」
信之「ははは、まだまだだな」
幸村「////」
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