戦国無双4SS→捧げもの「真田兄弟と三成休息日記・前編」

 捧げものです。珍しく前編・後編構成となっております。女性向けな描写があると思うので閲覧注意。



 「言っておくが、俺の部屋もこの屋敷もお前の弟病を見せつける場所じゃないのだが…。それと抱き着きすぎだ」
 幸村の事となると色々な意味で抑えが利かない信之に毎度注意するが、その程度で引き下がる信之ではなかった。三成の怒りは無双ゲージ三本じゃ足りないくらいだった。
 「何を言う、この乱世において我ら兄弟の絆を見せつけるのは寧ろ好機!兄弟自慢戦でもあれば、勝てる位だ」
 (く…苦しい…)
 どう見ても幸村は苦しそうにしているが、誰も突っ込まなかった。いや、突っ込めなかった。後が怖いというのと面倒くさいという理由が多い。なお兼続は元々、兄弟仲を絶賛しているので除外する。
 「三成…幸村と食事した時、随分と仲睦まじかったらしいな」
 「は?何の話…!?」
 「幸村からの『あーん』だと…私は幸村にしているのにこの前は恥じらってばかりだったぞ!」
 それは少し前に幸村が子飼い達の喧嘩に巻き込まれて大けがした時だった。信之は幸村の看病を熱心にしていた。信之は幸村に食事を食べさせるときは嬉しそうだったが、幸村自身はかなり恥ずかしがっていた。
 「幸村…お前喋ったな?」
 「え…あの…ダメでしたか…?そうでしたら、申し訳ございませんでした…」
 「殿…」
 「う…すまない」
 幸村は三成たちとの食事が楽しかった事を信之に話したにすぎない。左近でなくともわかるが、三成は相当恥ずかしかったので言ってほしくはなかった。睨まれるのは分かるからだ。
 「よくも幸村をにらんだな、三成…何も悪くないのに、どういうことだ!」
 「そこは謝るがお前の弟病はどうにかしろ!気色悪いわああああああ!」
 信之は幸村を離してから三成との泥沼論争を始めたのだった。
 「しかし飽きない方ですね」
 「そうだな」
 「ははははは、幸村は人気者だな!」
 裏切らないリアクションの兼続には誰も突っ込まず、ただその場から遠ざかる事だけ考えていた。
 
 そんな喧嘩から少し経った頃。三成は相変わらず多忙な日々を送っていた。周囲には休憩を取れ、と言われているが聞き入れない状態だった。
 「一所懸命なのはええが、息抜きもしないのはどうかと思うがな…」
 「お前さまのいう事を聞かない時点で心配だよ…」
 豊臣夫婦も三成の頑固さには手を焼くこともあった。二人は今、左近や吉継を呼んで休憩を取らせる作戦を練っていた。
 「かれこれ3日は働き続けていますからね。いい加減休んでもらわないと…」
 「俺達が言ったところで聞くまい、左近。しかし、どうしたものか」
 「なら幸村が言うのはどうでしょうか?」
 「ちょっと兼続さん、あんた何を?」
 「秀吉様の代わりに幸村が休息を取って欲しいとお願いすれば三成も聞くだろう」
 兼続のいう事には一理あった。三成は幸村の事を気に入っているし、素っ気ないのだが何だかんだで態度は丸くなる。そう考えると試す価値はある、と全員思った。
 「じゃあ、あたしから頼んでおくね」
 と、ねねは先に部屋を出た。残ったメンツもひとまず会議を終えたのを機にその場を去って行った。
 ―中庭。幸村は清正たちと鍛錬を終え、のんびりしていた。
 「ふー、一休み」
 「この前は悪かったな。その…怪我はもういいのか?」
 「流石にいつも通りの事は無理ですが素ぶり位なら問題ないと医者にも言われましたので大丈夫です」
 清正たちは口げんかの末に正則を殴り飛ばした時に幸村がいたことに気づかず、そのまま二人は落ちてしまい、幸村を大けがさせてしまった。ねねのお仕置きも凄まじく、喧嘩がコミュニケーションとはいえ無関係の幸村を怪我させてしまったのはまずかった。幸村は怒っていなかったが、信之の怒りのオーラはすぐ分かった。そう思いながらも三人は暫く談笑していた時に、ねねがやってきた。
 「幸村、丁度良かったよー!清正も正則も来てくれる?話があるんだよ」
 その時、清正の目が光ったのは言うまでもない。
 変わって先ほど左近たちが集まっていた空き部屋。
 「三成の奴、また根を詰めているのか?数日ずっと籠りっぱなしだろ」
 「叔父貴のいうことも聞かない位って、やばくね?」
 この二人も三成が多忙なのはわかっているのだが、それでも休まずに働いているのは心配になってくる。
 「それで幸村が休むように言えば聞くんじゃないかと思ってね」
 「あ、そうでしたか。流石です、おねね様」
 幸村にねねを取られるんじゃないか、とかどうでもいいことを思っていたがそうではなかったので清正は一安心した。正則はその様子を冷めた目で見ていた。
 「三成の奴、お前と兼続と一緒の時ってすげー楽しそうだし、良いんじゃねーの?行って来いって」
 「私ごときの言葉で聞いてくれるでしょうか…?」
 「騒々しいと思えば、そんな事を企んでいたのですか?おねね様」
 「あ…三成…聞いていた?」
 「あれだけ騒がしかったら分かります。それに政務は今終わりました」
 久しぶりに出てきた三成だが顔は疲労の色が濃く、今にも倒れそうな雰囲気だった。幸村は心配そうに三成を見た。
 「三成殿‥お休みになられた方がよろしいかと。皆さま心配していましたし、私も気が気でなりませんでした」
 「そ、それは…すまなかった」
 やっぱり、幸村には弱いというか甘い三成。ねね達は予想通りの反応だと思った。分かりやすすぎて、逆に引く。当の三成はそんな自覚はない。本人としては幸村の兄貴分でいたいとの事だが、そんな三成を無視して清正たちは畳み掛けてきた。
 「三成、幸村もこう言っているんだから休みなよー」
 「そうだぞ、おねね様の言うとおりだぞ(ここで一気に兄貴として良い所見せておけ)」
 「幸村のいう事聞いとけよ」
 「…分かりました、おねね様。今日は休み…」
 「だーめー!3日間お休み!!清々しい位に休みなさい!」
 こうして三成は幸村と一緒に休息を取ることになった。
 「ま、これで殿も大人しく休んでもらえれば少しは助かります」
 「倒れては元の子もないからな」
 「幸村にはかなわないな」
 ねねから事を知って左近たちはほっとした。今度は幸村たちをまぜて談笑していた。兼続が持ってきた団子はおいしく、正則は特にがっついていたが清正にどつかれていた。
 (今はゆっくりするか)
 三成は久しぶりの休息とともに団子を堪能した。幸村の方をちらっと見るが嬉しそうに団子をほおばり怪我も順調に治っていることも含め、自分まで嬉しくなってきたのだ。だが三成は信之の事を考えずに幸村とともに休暇を過ごすことをすっかり忘れていたのを後悔することになったのは言うまでもない。
 「団子とは良いものを」
 「兄上!あの…一緒に食べますか?」
 突然、信之がやってきた。幸村は嬉しそうに立ち上がり、団子を皿に乗せて信之の分を渡した。
 「ありがとう幸村。お前は気が利いて助かるよ」
 「どうぞ、食べてくださいね」
 もう二人だけの空気になってしまった。幸村は気にせず、信之に団子を食べさせ、信之も満足そうに食べる光景は正直言って気持ち悪い。甘すぎる位に甘いので周りはドン引きだった。
 「お前たち…恥ずかしくないのか?」
 「え?あ、申し訳ございません。座って食べるべきでしたね」
 そうじゃねーよ。と正則が突っ込もうとしたが、とばっちり喰らうのを嫌った清正は強制的に黙らせた。さっきまでの空気が一変してしまい、左近はそろそろ帰りたくなってきた。
 「幸村、もっと食べさせてくれないか?」
 「あ…はい。兄上、どうぞ」
 「結局こうなるのかああああああああ!!」
 三成の休息は結局、騒がしい日常と変わりないものになりそうだった。

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