診断メーカー結果「100万人の戦国無双の信之×泣き虫の幸村」です。
銃声…それは戦が…世が変わる音となった。武田が滅び、何かが崩れた音が聞こえてきた。時折、世の中が壊れる夢を見る。楽しかった時間を壊す銃声とともに。武田の人々、家族、民…その全てを1発の銃弾が奪い去っていく。とても悲しく、思い出したくない滅亡の夢…。
「…夢か」
幸村はまた夢を見ていた。長篠の敗戦以降、何度も見ている夢…。楽しかった時間をすべて壊す銃声を聞くたびに目覚める。最強とうたわれた武田の滅亡に直面し、未だに立ち直れない。
(まだ夜か…)
何の気なしに部屋から出ると満月は綺麗に輝き夜風が気持ちよく、幾分か落ち着いた。あの夢を見ると起き上がってしまい眠れない日々が続いていた。
「これではだめだ…悔やんでも仕方ないというのに…」
けれど夢を見た後は涙が止まらなかった。平時は弱音を必死で抑えても、こうして一人夜空を眺めるときはどうしても耐え切れずに泣いてしまう。けれど誰にも気づかれたくない…その思いが強かった。
仕事を終えて部屋へ戻る途中、信之は縁側で寝ている幸村を見つけた。
「こんな所で眠るとは…幸村、部屋で寝なさい」
信之は幸村を起こすがやけに熱かった。額に手を当てれば、風邪をひいていることが分かった。目元も腫れている事から泣き続けていただろう。
「ん…あ、に、うえ…?」
「風邪をひいているぞ。ちゃんと部屋で寝るんだ」
「すみません…」
信之は幸村を部屋まで運び、その晩は寝ずの看病をした。
「信之様…幸村様は?」
「そなたか。今は大人しく寝ているがうなされている」
くのいちは心配になって幸村の部屋へやってきた。信之から医者の話を聞いたが、身体的な過労もあるが精神的に傷ついていることも大きいとの事だった。それを聞き、信之は心当たりがある顔をしていた。
「長篠の戦が原因だろうな…あれから元気がなくなっているな」
「乗り越えようと必死になっていましたからね」
2人は幸村が立ち直ろうとしていること、迷いが消えない事、それを悟られないように抑え込んでいるのは分かっていた。だが相談してくれないのは少しさみしく感じていた。
「信之様、休まなくていいのですか?」
「大丈夫だ。それよりもそなたは水と手ぬぐいを頼む」
「はい、分かりました。幸村様って結構泣き虫ですし、頼みますよ」
「分かっている」
くのいちは信之に軽く頭を下げてから部屋を出た後、幸村は目を覚ました。
「ん…あにうえ?あれ?ここは…?」
「お前の部屋だ。昨晩、縁側で寝ていたのを私が見つけて、あの子と看病をした」
起き上がろうとする幸村を信之は制した。
「すみません…何から何まで…」
「気にするのであれば、風邪をしっかり治す事だな。それと…お前は少しくらい弱音を出しなさい」
「え…?」
信之の意外な言葉に幸村は目を丸くし、そんな幸村の頭を信之はそっと撫でる。
「武田の滅亡、長篠の戦…とても辛く、怖かったのは知っている。それを克服しようと毎日戦っていることも私も父上もあの子もわかっている。だから私は力になりたいのだ」
「でも…弱音を吐くわけにはいかな…」
「ここは私とお前しかいない。それに夢見が悪いのは不安を溜め込んでいるせいかもしれぬ。だからこそ、思いっきり泣きなさい」
これがきっかけとなり幸村は今まで塞いでいた気持ちをすべて信之に話し、その日は信之に抱き着きながら泣きじゃくっていた。まだまだ自分に甘えてくる幸村に苦笑いしつつも、自分を頼ってくれる事がどこか嬉しい信之でもあった。
「幸村、今はゆっくり休みなさい。戦うのはそれからでも遅くないから」
「兄上…ぐず…」
ひとしきり泣いたからか、幸村はそのまま寝てしまった。さっきまで泣いていたため目元は赤いが寝顔はどこか落ち着いていた。
「これで少しは気持ちも軽くなるだろう。後はお前の心次第だ…幸村」
繰り返し見ていた夢…いつも鉄砲ですべてが壊される夢だった。が、今日は違っていた。暗い空間の中、泣きじゃくる幼い自分がいた。今まで辛いことを辛いと言えなかった幼い自分自身だ。幸村は幼い自分と向き合った。
「辛いことを押し付けてしまったね。でも私は大丈夫だから、辛いと思った時は辛いと言えるようになる」
そういえば、幼い幸村は笑顔を見せ光となって消えた途端、青空となった。
(父上、兄上…私は少しでも進めるように頑張ります)
数日後、幸村はすっかり元気になり、今まで辛そうだったのが嘘のようだった。
「幸村様、元気になって良かったじゃない」
「一時はひやひやしたんだから…あ、お見舞いの食べ物ありがとう」
「甲斐殿、本当に美味しい果物有難うございます」
「わざわざ足を運んでまで…感謝します」
信之と幸村は改めて甲斐姫に礼をするが、彼女は照れてしまった。
「良いんですよ、元気になって何よりですから」
「照れるな、怪物熊姫さん」
「誰が熊姫よ!?毒舌忍びがああああ!」
そんな二人のやり取りに幸村は笑いながら見ていた。
「兄上…私は少しでも進んでいるでしょうか」
「ああ、こうして笑えるようになったから大きく進んでいるよ」
恥ずかしそうな幸村をよそに信之は彼の背中をたたいて笑いながら返した。
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