『導き』
はらり…はらり…。
葉が散る。朽ちる。そして凍る。末路は割れる。普通なら割れる訳がない。だが実際に割れる。そう、ユキアネサが…そうしている。
ふわり
などと言う表現よりも、ひんやりとした風が舞う。
「…そんな時期か」
街は新年に向けて活気付き色々と多忙の空気だが、人の多い場所が苦手なジンは静かな場所が落ち着くのである。しかし、今は止まる訳には行かない。
「兄さんは…カグツチに…」
ただジンは何かに導かれるかのように兄がいる都市へと進んだ。
『繁華街での出来事』
「さくっと図書館へ行きたいが…」
赤鬼との戦闘後、とりあえず休む事にしたラグナ。あれだけ固いとは思わず、未だに響いている。幸いながら、さっさと身を引いてくれたので、余計な波紋が及ばずに済んだ。
「魔素の影響がある割には、賑やかで良い街だな」
ふと、人の気配に気づき身構える。振り向けばシルクハットを被った子供と…大きな人形。
「休む暇なしかよ…おいおい」
「始めまして。僕、カルル・クローバーと言います。ラグナ・ザ・ブラッドエッジですよね?」
妙に礼儀ただしいも、咎追いだと勘付き、戦闘態勢に入る。
「だったら、どうする?」
「貴方を捕まえま…あぁ!」
近くにあった木材を蹴飛ばし、撹乱させた後、とんずらこくラグナ。
「俺は子供を殴る趣味はねぇの!」
逃げられてしまったことに落ち込むカルル。だが、落ち込んでいられない。
「進まなきゃ。さぁ、行こうか姉さん」
なんとか子供を撒いて、安心するラグナ。しかし…
「ここで会ったが100万光年!悪党ラグナよ、拙者が成敗してくれる!」
「だぁ!こんなんで図書館行けるかぁぁぁぁぁ!」
『女医と少女』
「あの…有難うございます」
「いいのよ。それより、統制機構の人間が長居すると、問題大きくなるから早めに出た方がいいわよ」
長い金髪の少女…ノエルは道中、顔の分からない猫の様な耳をした少女に殴りかかられ、一悶着があった。その時に怪我を負ってしまうも、たまたま通りかかった眼鏡を掛けた女医に助けられた。何でも、この猫娘と知り合いらしく誤解が解けたあと、猫娘は「悪かったニャス」と謝罪し、どこかへ行ってしまった。女医から猫娘の名前は「タオカカ」と言うカカ族の娘と聞かされた。また女医も「ライチ・フェイ・リン」と名乗り出た。
「じゃあ私はこれで失礼しま…」
「待ちなさい。これ救急セットよ。あるだけでも違うから…ね」
ライチはノエルに救急セットが入った小さなポーチを渡した。そして、
「何から何まで有難うございます。あの…」
「別に聞かないわ。訳ありなんでしょ?実は私も訳あってカグツチにいるから」
街の人間誰もが彼女を慕っており、この街の住民かと思ってたが、意外すぎた、と言いたげな顔をした。記憶探しも任務も大事だが、少し人を…外を…知ろうと思った。
「じゃあ、私はこれで失礼します」
「えぇ、何かあったら立ち寄っても構わないわ。ご飯おごるし、手当ても歓迎よ」
ライチはウィンクしながら見送り、ノエルもソレに答え頭を下げた。
「先は長そうだけど…少佐見つけないと…」
【話のコンセプト】
導き→冬を表現。ユキアネサの低温発生を書きたかった。森博嗣の「朽ちる、散る、落ちる」みたいな感じを出しました。と言うか、元ネタです(笑)。
繁華街の出来事→ラグナ災難。追う者と追われる者の一場面。
女医と少女→ひょんな事で知り合ったと言う雰囲気。気づけば女子オンリー(笑)。
【後書き】
ジンはもの凄く真面目さを出してますが(季節感出したい場合、何となくギャグ出来ないキャラが良いと思っている変な私)、ラグナがギャグです。ノエルがほのぼの。文章量の違いは勘弁してください。
初めてブレイブルーでSS書きました。雑談の方が気持ちが楽だけど、こっちは気遣いました。
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朽ちる散る落ちる (講談社ノベルス) (2002/05) 森 博嗣 |
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