戦国無双4SS→「おねね様騒動と真田家の看病日記」

 フォロワーさんのネタから生成しました小ネタです。例によって例の如くなのか、女性向けになっていると思うので閲覧注意です。



 「よーし、獣耳生成薬完成!誰に試そうかなー」
 (なんか、ろくでもないもの作っている…)
 たまたま聞いてしまった薬の生を聞いて三成はすでに嫌な予感しかしなかった。
 「全くあの人は…何を考えているのやら」
 「まあまあ」
 さきほどの事を左近に話すも、いまだに呆れている三成を左近は宥めた。ねねの忍法で何かしら思いついてはとばっちり喰らっている三成としては正直有難くないものである。清正はやたら喜んでいるが、それもそれで気持ち悪い…というか幸村絡みで暴走する信之のように怖い。
 「そういえば、吉継さんが真田家へ行きましたよ」
 「どうしたんだ?」
 「なんでも幸村が風邪を引いたらしくて…」
 ある意味こっちも事件だった。流石にねねも変な薬を幸村にのませるような性格ではないだろうが、どっちにしても心配である。
 「吉継なら問題ないと思うが俺も後で見舞いにでも行く」
 「なら薬か栄養価の高い野菜でも持っていきましょうか」
 三成たちが幸村の風邪の事で話している頃、信之と稲は幸村につきっきりで看病していた。この夫婦、とんでもないブラコンである。稲はまだ義姉として張り切る感じで微笑ましいが、兄の信之はたまに暴走する。その辺は本編や外伝シナリオをやっていただければわかる。
 「肌寒くなってきたというのに長時間川で探し物をしていたら、風邪をひくことくらいわからない年齢でもないだろ」
 「すみません…」
 申し訳なさいっぱいで謝る幸村。
 「でも、どうしてずぶ濡れになっていたの?」
 「どうしても探さなければならないものがあったからです…」
 こうなった背景はいつも持ち歩いているお守りの紐が切れてしまい、川に落ちてしまったため薄着の状態で探し続けていたのである。其のお守りはまだ幸村も信之も幼いころ、縁日で見つけた桜の花弁の刺繍が入った少ししゃれたお守りであった。赤を幸村、黒を信之とそれぞれ買ったのだ。紐の色とデザインが同じなので、お揃いだと幸村はとても喜んでいた。信之も兄弟でそろいのものを持っているのは嬉しかったし、不思議と力がわいてきた。それ故に落としてしまった時は一心不乱になって探し続けた。幸い草木に引っかかっていたため、見つけられたが気づけば日が沈みかけていた。帰ってきた幸村の様子を見て当然信之は驚いていたし、稲も急いで着替えを用意したほどだった。
 「あのお守りか…」
 信之は懐から年季のある黒いお守りを出した。
 「とてもいいお守りですね」
 「ああ、桜の刺繍が綺麗だったからな…。ん?客か?」
 「私が出ます」
 稲姫は慌てて出て行った。
 「幸村…お前がお守りを大切にしたい気持ちはわかる。けれど、自分の体をもっと大切にするんだ。私も稲も悲しい」
 「…はい」
 「今はしっかり風邪を治…もう寝てしまったのか」
 自分の前ではどこまでも子供っぽい幸村に微笑みつつ、そっと頭をなでた時、稲も戻ってきた。
 「信之様。大谷様が見舞いにきました」
 「吉継か…わざわざすまない」
 「見舞いの品に野菜を持ってきた…しかし幸村は本当にお前の前だと幼い弟みたいだな」
 頭をなでた途端に安心しきっている寝顔になったぞ、と言えば信之は苦笑いした。
 「いくつになっても弟は弟だ」
 「信之様は本当に幸村の事が大好きですからね」
 (周囲はそれを行き過ぎた弟病だと思っているのだがな)
 一方、ねねは三成とともに真田の屋敷へ向かっていた。
 「三成も幸村の事は家族のように思っているんだね、うん!良い事だよ」
 「…それはそうと、ちゃんとした薬でしょうね…そのツボの中身」
 どこまでも疑い深い三成に、ねねはむくれていた。なお、ねねと三成は信之たちに挨拶をしてから風邪薬と薬膳粥の作り方を稲に教え、そのまま吉継たちと一緒に一泊した。
 翌日。
 「少し熱は下がっているな。さすが、おねね様特製の薬と粥だ」
 「はい…昨日を思えばすごく楽になりました」
 「治るまで安静することだ、良い…!!幸村!!どうした、その耳は!?」
 だが、異変はすぐに起きた。なんだか別の何かが幸村についていた…犬っぽい耳が。それは信之も同じだった。
 「え…あ、耳が付いていますね…」
 「な、何故だ…私は何ともないが…あれ?」
 その瞬間、真田の屋敷では一斉に悲鳴が上がったのだった。
 「おねね様!結局、風邪薬じゃないって事ですよね!?」
 「ごめーん!調味料と薬のツボ間違えちゃったみたい……」
 因みに三成と吉継がキツネ、稲姫とねねが猫、信之と幸村は犬となっている。心配していたことが現実になってしまい、三成は怒りを隠せないと同時に恥かしくなった。これでは清正や正則に笑いものにされるし、何よりも風邪で寝ている幸村に申し訳ない。そして最悪のタイミングで真田兄弟と縁のある面々がやってきた。
 「幸村!新鮮な野菜を持ってき…」
 「殿、叫び声聞こえましたけど、何か…」
 左近と兼続は皆に変な耳が生えているのを見て絶句。またしても屋敷は悲鳴の嵐に見舞われた。なお幸村は悲鳴にも気づかない位、深い眠りについていた。
 「信之様…幸村は今、犬耳なのですね…可愛いです」
 「ああ、幸村は可愛い。思えば私もおそろいの犬耳なのだから寧ろ歓迎しなければ」
 あれだけ騒がしかったというのに幸村の寝顔と犬耳でコロッと意見を変える真田夫婦に三成はいつもの如く疲れていた。高熱で苦しそうにしていた幸村も少し顔色が良くなっており、安心しているはずだが今は犬耳に喜んでしまっている夫婦に突っ込みを入れたくても出来ない。何だかんだで幸村は友人として大切にしたいと思っているし、下手に騒いで風邪が悪化しても嫌なので我慢していた。
 「やっぱり撫で心地が最高です…幸村の髪って気持ちいいですよね」
 「稲、私も堪能したい…弟は可愛いというのは正しかっただろ?」
 「はい。信之様が夢中になる理由すぐ分かりました。もう兄弟揃って犬耳は素敵です」
 「稲の猫耳も可愛いらしくて似合っている」
 「まあ、信之様ったら…上手ですね」
 この気持ち悪い獣耳トークを止める者は誰もおらず、ねねもノリノリで参加するわ、兼続も愛があふれていると感激するわ、吉継は我関せず、左近は付き合いの長さで突っ込みをやめている有様だった。
 「ん…あに…うぇ…?」
 「起きてしまったか…しかし、お前はどんな獣耳でも似合っていて可愛いぞ」
 「幸村は犬耳が最高だよ!凄く真面目でいい子だもの、でしょ?信之、三成?」
 「俺に振らないでください…幸村は真面目で真っ直ぐなのは確かですけど…」
 照れくさそうに答えれば、幸村は少し起き上がってから柔らかく微笑んで礼を言った。
 「幸村、上着を着なさい。三成、お前今、満更でもない顔していなかったか?」
 「頼むから睨まないでくれ…」
 自分のぶっきらぼうな所を受け入れてくれた幸村や兼続と一緒にいるのは楽しいし、嬉しく思っている(口に出すと恥ずかしいので言わないが)。兼続は大らかで前向きな所もあるが、兼続という人となりだと妙な説得力を生み出していると思った。やかましいのは勘弁だが。
 「幸村は本当に三成と信之殿と稲殿が大好きなのだな。愛があふれて良いぞ」
 「兼続殿…あまり頭をなでないでください…その…恥ずかしいです」
 「何を言うか…景勝様にこうして撫でられて喜んでいたではないか」
 この男の悪いところ、平気で爆弾を投下しまくるどころか、地雷原に突っ込んで爆発させることを全く気にしない所である。だが、新たな事実が発覚したがために兼続は信之たちの質問責めに遭った。そりゃそうだ、幸村の事は自分にまかせられたのだから、そうなる。
 「上杉時代について教えてください…」
 「幸村は可愛かったのですか!?」
 「あにうえ…くるしい…です」
 信之と稲姫に抱きしめられ身動きとれなくなった幸村をよそに真剣になり始めた夫婦に兼続もたじろぐ。
 「あの…それは後日します故…さらば!!」
 「逃がすかああああ!お前も道連れだああああ!」
 三成は折角の弾除けを逃がすまいと、兼続の足首を掴んだ。兼続は派手に転んで思いっきり鼻血が出た。物理的な力の所為で。
 「さあ、話してもらいますよ…」
 この時、兼続は上杉時代の事をうっかり話した失態に気づいたが、遅い。信之は兼続を引きずって、別室にて上杉時代の事をはかせる準備を始めた。その間稲姫に幸村の看病を任せた。
 「兼続さん…本当に察しが悪いですよね」
 「やれやれだな」
 「幸村、ちゃんと寝ておくことだな。また信之が暴走するぞ」
 もう一人遠慮しない奴がいた…と、三成は思った。
 「はい…分かりました」
 すでにうとうとし始めていた幸村を稲姫は寝かしつけた。しかし、
 「あ…熱上がっている…」
 「左近、お前幸村の看病に付き合え。俺は流石にここにずっとはいられん…仕事があるからな」
 「分かりました…って、殿。俺も犠牲に!?」
 このままおねね様が不在だと清正がうるさいから奴を代わりによこす、と左近に言い残して三成は屋敷を去った。
 兼続を絞り上げてから信之は幸村の部屋へ戻った。稲はねねと共に夕餉の支度を始め、左近は清正を迎えていたため、誰もいなかった。
 「本当に無理ばかりするな…お前は」
 「…」
 反論できないため布団の中に潜る幸村はどことなく子供っぽくて思わず笑ってしまった。ねねの薬で生えた耳が丸見えなので余計に。世間から見れば弟好きすぎて危ない弟病兄貴なのだが、それを気にしないどころか無自覚な兄貴である。
 「けど私は元気なお前が一番好きだから、早く治って欲しい」
 「兄上…はい、幸村はしっかり安静して風邪を治します」
 たまに一人称が自分の名前になってしまう所が治っていない所も可愛げがあって良いな、と思う信之だった。外野には気づいているも、この際気にしない事にした。
 (今回はやめておこう…幸村の看病が先だ)
 その外野というと…、
 (あの弟病酷くないか…幸村も気づかないとか変だろ?というか三成の奴、覚えていやがれ…おねね様と一緒なのは嬉しいが身代わりにしやがって…)
 (抑えてください…幸村の風邪がぶり返す方が大変ですよ…後が怖いですって)
 (幸村に罪はないけど、あの変態兄貴は腹立つ)
 (あれは止まらないぞ…恐らく)
 (ああ、なんて素晴らしい兄弟愛なの…稲は全力で応援します)
 (もう二人とも、仲良くやってね!)
 (兄弟愛は素晴らしいが私は今猛烈に疲れている…)
 漸く解放された兼続はまるでするめいかのように干からびていたと、後に清正と左近は正則に教えたら正則は大爆笑、三成は必死で笑いをこらえたのは別の話。
 この騒ぎから数日たって漸く幸村も風邪は完治して、元気に生活していた。そして獣耳も自然と消え、見舞いに来た面々も挨拶をして帰った。幸村は庭で信之と一緒に茶を飲んでいた。
 「犬の耳は違和感ありましたし、風邪も長引いて散々でした」
 「私はいつだって犬耳生えたお前を歓迎するぞ」
 「私はもう嫌です、兄上」
 さすがの幸村も獣耳は拒んだ。そっぽ向いて答える様子に結局、可愛げあって良いぞ幸村、と堂々と抱き着く上に言い切る信之にどうして良いか分からず、うなだれるしかなかった。

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