ちょっと女性向けかもしれないので閲覧注意。今度は信之風邪ひきました。
冬の寒さと日頃の多忙がたたったのか信之は風邪をひいてしまい、幸村と稲姫は協力して看病していた。幸村は水をかえるため、信之の部屋を出たところである。
「おねね様に薬膳粥の調理法を教わって良かったです」
「おねね様には感謝しなければならないな。粥はとても美味しいよ、稲」
風邪を引いたと知ったときの幸村はひどく心配していたため、稲姫とくのいちは必死で宥めたのは覚えている。幸村が風邪を引いたときは、あれだけ注意したのに自分がこの有様では示しがつかない。
「幸村に風邪ひいたことを注意したというのに私がこうでは…」
「兄上…水持ってきましたが…あの…」
「ああ、大丈夫だ。入ってきなさい」
幸村は申し訳なさそうに入ってきたが稲姫。
「私はお椀を洗うから…幸村。信之様の事、お願いね」
と言いだして、退室した。
(幸村…頑張るのよ!ちゃんと本音を言えば信之様だって…)
一方、信之の風邪を引いたと知った三成は吉継と兼続とともに真田家へ向かう所だった。
「幸村の次は信之か…」
「真田家の事だ。愛の溢れた看病をしているだろう」
生薬と野菜を抱えながら兼続が元気に返した。だが三成は不安を隠せない。
「おねね様特製の生薬だが…また獣の耳が生えないかと思うと心配だ」
「俺は気にしないが、なったらまた真田家が騒がしくなる流れになるな」
それに関しては誰も否定しなかった。
稲姫が出て行った後、長い沈黙があったが先に破ったのは幸村だった。
「兄上…私は…」
幸村は信之と稲姫の会話を聞いていた。幸村にとって信之は自分にはもったいない出来た兄であり、誇りでもあった。風邪を引いたときだって、本当に心配だった。
「稲と私の話を聞いていたのだろ」
「…はい」
「そんなに泣きそうな顔をしないでほしい」
「私だって…兄上は自慢の兄上です。兄上は私を誇りと言ってくれたこと、嬉しかったです。それに…いつも私を支えてくれるじゃないですか…そのような事を言わないでください…」
途中から泣きながら本音を語る幸村に信之は起き上がって、そっと頭をなでた。
「兄上…私はもう、そのような幼子ではありませぬ」
「そうやって泣きじゃくる姿では、まだまだだぞ…だが、風邪を引いたことを前に注意したのに私が引いてしまってはお前に示しがつかないと思い気弱になってしまったようだな」
こうして泣かせてしまってすまない、と信之は謝るが幸村は首を横に振った。
「いいえ。それよりも兄上は風邪を治すことを優先してください」
「ああ、ちゃんと治す」
「治ったら…その…一緒にお守り作ろうか」
「はい!」
そう答えたときの幸村の表情は晴れており、信之もまた安心して微笑んだ。と同時に三成たちもやってきた。
「信之、大丈夫か?さっき生薬と野菜を稲姫に渡したところだ」
「具合は幸村の時と違って軽そうだな」
「わざわざ有難うございます」
幸村は三人に礼を言えば兼続は仲間が困っている時に助けるのは当然だ。と答えた。因みに三人は幸村の目元が赤いのに気付いているが今は触れないようにした。
その日の夜、見舞いに来た三人は真田家で泊まることになり、幸村は寝る前にその三人と一緒に雑談をしていた。
「幸村」
「はい、三成殿?なんでしょうか?」
「信之の風邪で心配なのはわかるが、お前まで落ち込んだら信之は悲しむぞ」
「お前の元気な姿こそ、信之殿にとって最高の風邪薬だ」
だから泣かなくてもいい、と三成は幸村の肩に軽く手を置いた。
「疲労が顔に出ている。看病も大事だが、お前もしっかり休め」
「吉継殿…はい、では皆さん。おやすみなさい」
幸村はさっきの照れくささが抜けないまま、部屋を出た。
「全く…どこまでも人騒がせな兄弟だな」
「だが、真面目で真っ直ぐな気概は良いと思うぞ」
「これだけ人を引っ掻き回すのもある種の大物だな」
この数日後、信之の風邪は治り、幸村と一緒にちりめんで山茶花を作ってお互いの部屋に飾ったのはまた別の話。
おまけ
幸村「皆さん、本当にありがとうございました」
兼続「これからも良い野菜が入ったら贈るぞ、幸村」
三成「お前も無理だけはするな。それだけだ」
吉継「相変わらず素直じゃないな」
三成「うるさい…」
信之「幸村が元気なくして私は辛かった…だがこうして元気になったから、思う存分抱き着く!」
幸村「く…苦しいです…兄上…」
三成「お前は結局それか!!」
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