捧げものでリクエストは「吉幸」です。女性向けな描写があるかもしれないので閲覧注意。
吉継に新しい家族が出来た。真田家の二男・幸村は彼の娘と婚姻を結んだ。周囲…特に兄の信之は目に入れても痛くないぐらいに大事にしているのは良く分かるが偶に暴走する所が痛い。それさえなければ、嫡男として責務を果たす真面目な青年である。また三成も無愛想だが本心は嬉しく思っている。矢鱈と兄貴ぶりたい所を見せているが信之相手になると突っ込み魂が発揮している。兼続とは違う意味で…。
「義父上」
「来たぞ、幸村。そうだ、干菓子を持ってきた」
屋敷へ上がると吉継は干菓子を幸村に見せた。色とりどりで鮮やかだった。
「まずは私の部屋へ行きましょうか」
「そうだな」
勝手知ったる何とやらではないが、吉継は広間へ向かった。因みに信之は視察で屋敷にいない。そして稲姫は物陰から二人の様子を見ていた。
(特に何もないわね。ひとまずお茶を出さないと…)
掴みどころのない吉継に対して妙に身構えていた。
一方、三成は仕事に勤しんでいたが休憩中に視察ついでにやってきた信之と共に談笑していた。
「今日は吉継がそっちにいるみたいだな」
「ああ‥。結婚してから幸村と一緒にいる時間が減った気がしてならない」
(年頃の娘と一緒にいる時間が減って落ち込む父親じゃないんだから…)
と左近は突っ込みたくなったが面倒くさくなるので言うのをやめた。信之が言うには夫婦仲はとてもよく、稲姫も安岐と仲良くやっているそうだ。信之も二人の結婚は喜んでいたのは事実。しかし…、
「心なしか義妹の視線が痛いというか、釘ばかりさしてきて辛い」
「そ、そうか…(流石吉継の娘だな。信之の弟病に動じないあたり侮れん)」
結局、三成は信之の愚痴を全部聞く羽目になってしまった。変な所で不器用なのは三成らしいと言えばらしいのだが。やはり弟病が治ることはないだろうな、と彼は改めて実感せざるを得なかった。
「…屋敷を壊すなよ」
「うぐ…」
釘をさすことを忘れない。そして言い返せない信之。この日は珍しく屋敷…いや、三成の部屋は無事だった。
変わって吉継たち。幸村は妻に一緒に飲まないか、と誘ったが、彼女は稲姫達と一緒に頂くと言って、退室してしまった。
「女性同士で食べた方が楽しいであろう」
「あ…そうですね。屋敷が賑やかになって嬉しいです」
幸村はのんびり茶を飲みながら庭に目をやった。桜が綺麗に咲いており、天気も良く、穏やかに時間が過ぎているように思えた。
「どうしたんだ?」
「子供の頃は兄上と桜の木の下で稽古をつけてもらったことを思い出していました」
「その頃から仲が良かったのだな」
「そんな…私にはもったいない位、出来た兄です」
幸村はそういうものの、自慢に言っているように聞こえない。何かしら不満があるような感じだった。
「兄上は稽古で本気を出していないと気づいているのですが言えないままです」
「そうだったのか」
「あ、この事は皆に内緒にしてください。その…兄上には特に」
口元に人差し指を当てながら恥ずかしそうに言うと吉継は分かった、とうなずいた。ただ特に隠し事するような感じはしないが多弁という訳でもないため、本音を明かすのは意外に思えた。
「話はこの辺にして、この桜を眺めながら茶を飲みなおすか」
「はい。干菓子、いただきます」
(信之が大事にしたがるのが何となくわかるが、あいつは思いが強すぎるな)
美味しそうに干菓子を食べる幸村を見ると、何故だか安心してしまう。平時は子供っぽいというか弟としての面が強いせいだろうか。やたらと年上に好かれる婿の人となりは一種の才能だろうな、と思うことにした。
その日の夕方に信之は帰ってきた。
「幸村、帰ってきたぞー」
「兄上、おかえりなさい」
「…どうやら愚痴を零すだけ零した流れだな」
吉継は遠慮なく突っ込めば信之は詰まった。幸村が足りないと大体三成の所で愚痴をこぼすことが多くなっているからだ。
「夕餉は一緒に食べよう」
「は、はい…(兄上の笑顔が妙に怖い)」
幸村の顔が引きつっているのも気にならないほど、嬉しそうだったがもう誰もその事に突っ込んではいなかった。
オマケ
信之「幸村ー、今日は一緒に寝…」
吉継「悪いが俺も寝るぞ」
幸村「3人一緒で嬉しいです」
吉継「そうだな、お前の家族を思う気持ちは強い(なでなで)」
幸村「義父上、恥ずかしいです…」
信之「分かった…川の字で寝よう(がっくり)」
幸村「兄上、どうしたのですか?」
信之「何でもない…私はお前が元気ならそれでいい」
吉継(三成…お前今まで無事だったのが不思議なくらいだぞ)
三成「ぶえーーーーーーっくし!」
ねね「三成、風邪?」
清正「噂話じゃないですか?こいつは良くも悪くも話題に上がりやすいですし」
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