戦国無双4SS→「禾乃登」(こくもつすなわちみのる)

無双シリーズ

 季節ネタです。ちょっと女性向けかもしれないので閲覧注意。



 「兄上、稲が綺麗ですね」
 「そろそろ収穫時だからな」
 二人は一面の田んぼを見ながら、実りを感じ取っていた。蜻蛉も元気よく飛んでいる様子もまた、風情を感じる。
 「父上と兄上が頑張っているからですよ」
 「何を言うか、お前がいてこその私だ」
 「え?」
 幸村は信之の声は小さくて聞き取れなかったので、何を言ったか尋ねたが信之ははぐらかすばかりで答えは返ってこなかった。
 「なんで教えてくれないんですか!?兄上、待ってください」
 「秘密だ。さあ、帰ろう。屋敷まで走るぞ」
 二人は走って屋敷へ戻ったため、部屋へ着いたときには息を切らしていた。また、この日はいつものメンバーが屋敷へやってきた。
 「お前たち兄弟は本当に見ていて飽きないな」
 「そうだな」
遊びに来た三成は茶をすすりながら突っ込んだ(左近が言うにはねねに「ちょっとは休みなさあああああい!」と叱り飛ばされて休暇になったらしい)。
 「吉継さん、殿。その辺にしておきましょう。あー、信之さん・幸村。土産持ってきた」
 「ありがとうございます…これは立派な柿ですね」
 「私、蔵へ持っていきますね」
 と、幸村は風呂敷を抱えて部屋を出た。
 「そういえば稲が実っていて良かったぞ」
 「ありがとう。皆の力があってこそだからな」
 珍しく幸村の名を出さない信之に一同驚きを隠せなかった。弟自慢がうざすぎるのに…と、三成は思った。
 「そうだ、兼続殿。幸村は越後にて大丈夫でしたか?」
 「上田での戦いで駆け付けた以外はとても大人しかったですね」
 前言撤回、やっぱり幸村病が痛いのは変わらなかった。既に目つきが違う。
 「お前なぁ…」
 「三成、なんだその眼は?幸村が欲しくて仕方ないのか?私の大事な弟は誰にもやらないぞ!絶対だ!!」
 「落ち着け」
 吉継の容赦ない突っ込みがさく裂し、信之は撃沈した。
 「すみません。蔵の整理を少ししていたのでしまうのが遅くな…あ、兄上!どうしたのですか!?」
 信之が沈んだ直後に幸村は戻ってきた。当然幸村は困っている。
 「伸びていますね…。あの、皆さん。私は兄上を部屋まで連れて行きますので、これで失礼しますね」
 「そ、そうだな。幸村、信之を頼む」
 と、信之を担いで幸村はまた部屋を出た。だが三成は見逃さなかった。嬉しそうにしがみつく信之を。吉継や左近も同じだが幸村は何も気づいていない。しかし、突っ込みづらい三成であった。
 「所で今回季節ネタじゃないのか?」
 「冒頭だけになっていますね」
 そこもあるが、やはり幸村だけなのが心配故に全員信之の部屋へ向かった。
 ―信之の部屋
 「いたたたた」
 「兄上、しっかり冷やしてくださいね」
 殴られた理由を詮索しない幸村に感謝せざるを得ない信之。そのあと、ぞろぞろと三成達がやってきた。
 「幸村の看病で浮かれ気味じゃないだろうな」
 「三成、酷いことを言うな…そんなわけがないだろ」
 「幸村がらみで鼻息荒くなる奴の言葉とは思えないな」
 信之を殴った張本人こと吉継は容赦なく突っ込んだ。
 「信之さん、しっかり治さないと幸村が泣きそうですから今日は大人しくした方が吉ですよ」
 「左近殿!」
 あまり突っ込まれないが幸村も兄貴病…つまりブラコンである。酒の席で倒れた際、寝言が兄上だったり、なにかと兄貴自慢が多かったり、かなり信之にべったりな所があるがあまり突っ込まれない。大事なので2回言ってみた。
 「そんな幸村が可愛くて愛しいのだ」
 「もう一回沈めてやろうか…変態幸村病が…」
 三成は既に得物を構えて信之を殴ろうとしていたが左近と兼続が必死で止めたため、事なきを得た。
 「幸村、そうだ!今この時期は禾乃登というのだ」
 強引な話の流れをこちらへ持っていく兼続。すると幸村は耳を傾け始めた。
 「書いて字のごとく稲が実る時期を言うのだ。そうでなくとも、多くの作物が実って食が進む時期でもあるがな」
 「そうだったのですか…一つ勉強になりました」
 「ふん…」
 三成も熱が冷めたのか、鉄扇を振り下ろす気はなくなったようだ。この日は信之の部屋で雑談を始め、幸村による手芸とお守りの繕いでにぎわった。
 「稲穂に止まる赤とんぼとか風情だな、幸村」
 「皆さんと一緒に頑張った甲斐がありました」
 その一方で稲姫は甲斐姫とともに自分の部屋で談笑していた。
 「幸村はいつでも可愛いわ…信之様が熱心なのもうなずけるくらいに」
 「幸村様って凛々しい時と甘えん坊の時があって良いわねー」
 お互いいける口だと言わんばかりに幸村トークに花を咲かせていた。早川殿は楽しそうだと思いながら、
 「はい、次の句を詠むわよ。直虎さんが今の所沢山札を取っているわ」
 この娘、おしとやかな顔して侮れない。二人の懇願を無視して彼女は次の句を詠み始めたのだった。が、
 「甲斐、違う札よ」
 「うわああああん、そんなー」
 「終了―。はい熊姫さん、ビリでーす」
 くのいちは笑いながら3人分の札を数え終わった。
 (急に幸村様の話をしなきゃよかったんじゃあ…)
 (そっとしておきましょう)
 女たちの夜は長い。この後はイケメン談義で始まり、ウザメン談義で終わった。
 翌朝…、
 「兄上、もう頭のけがは大丈夫なのですか?」
 「勿論だ」
 朝から二人はこの調子でいちゃつ…もとい、仲よく朝餉を食べていた。稲姫やくのいちに左近は慣れているため気にしていないが、三成は頭が痛くなってきた。
 「幸村も少しは兄離れした方が良いんじゃないのか?」
 「それは出来そうにない。幸村と信之殿の仲は誰も入り込めぬ」
 三成は忘れていた、この愛頭が兄弟愛万歳とうるさい奴なのかを。そして(将来の舅こと)吉継は突っ込む気が最初からない事は分かっていたのでスルーは出来る。
 (俺しかいないのか…?この光景が変だと思っているのは?)
 だが幸村がいる手前、それを言う勇気を三成は持ち合わせておらず、出された食事を味わいながら食べるほかなかったのだった。
 おまけ
 高虎「吉継、久しぶりだな」
 吉継「ああ」
 高虎「なんだ、その百舌は?」
 吉継「幸村特製の百舌ぐるみだ。可愛らしいし、娘の土産にもなる」
 高虎「そうか…って、あいつそんな物作っているのか!?」
 吉継「手先が器用でな。俺用のお守りも作ってもらった」
 高虎「竜胆か…良いじゃないか(こんな趣味があったとは…)」
 吉継「あ、幸村。丁度いいところにいた」
 幸村「はい、何でしょうか?」
 吉継「高虎にもご利益があるようにお守りを作ってくれないか?」
 高虎「いや、良い。気持ちだけで十分だ。俺はこの辺で」
 吉継「そうか、元気でやっているみたいだから何よりだ」
 幸村「あの、帰りは気を付けてください」
 高虎「ああ、ありがとな」
 ―高虎は二人に挨拶をしてから、屋敷を出た
 吉継「そうだ、幸村。娘の分の百舌ぐるみまで済まないな」
 幸村「いいえ、気に入ってもらえて何よりですから(百舌ぐるみ?)」
 信之「何これ?納得いかないのだが…」
 三成「吉継…何気にしっかり幸村と仲良くやっているとは…恐るべし」
 兼続「吉継殿の娘と幸村が仲睦まじいのも事実だが…ここまでとは」
 左近「吉継さん、やり手ですね」
 ねね「幸村の将来は楽しみだね、清正」
 清正「おねね様が言うなら間違いです」
 官兵衛「何をしているのですか?」 ←通りかかっただけ
 ねね「幸村観察」
 官兵衛「…」
 後書きという何か
 本来やろうと思った重陽の節句もしくは果樹園ネタ(2012年ミニキャラカレンダーのイラストネタ)を辞めて、三十六計開催日にあたる時期をネタにしました。タイトルはまんま、その時期です。稲が実る時期との事で冒頭はそうだと思わせる雰囲気作りをしてみました。いろいろ拙い部分は多いのですが、キャラ愛を詰めに詰めてみました。
 おまけは婿と舅の会話メインになっちゃいましたー。何も考えなかった結果がこれだよ!
 このように短いネタですがおつきあいくださり、ありがとうございました。

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