『虚空の日々,募る黒』
エックスが休暇でいない頃、ゼロは次の拠点を制圧すべく準備に取り掛かっていた。一時期、ヤケ気味となり勝手に単独行動をした挙句、スノーベースの一件で覚醒をしてしまい無駄な犠牲を出して苦しむエックスの事を思い出し、反省したからか大人しくする事にした。
「天下の特A級も、前忍び部隊隊長の前では、赤子だな」
「赤子言うな」
同じく部隊長であるイーグリードの言葉に、苦虫を潰すゼロ。丁度良いところに、ビードブードやホーネックが来た。
「隊長は本当にトウコさんには頭上がりませんね」
「確かに。今回はゼロも反省すべきじゃねぇの?」
言いたい放題抜かす両者に、ゼロは実際の所、反論できないでいる。それもその筈、エックスが絡むからである。過去、自分が死んだ時は彼の心に深い傷を負い、復活した時はシグマウィルスの事や前述の事が負い目で助けたは良いが、中々会えずにいたのである。エックスは気丈である事はゼロは理解しているが、やはり元々が繊細なので、悲しませない努力を最大限に努力する事にした。
(しかし、覚醒と言えば、あの廃墟立てこもり以来か…)
「どうしたんだ、ゼロ?急に考え込んで…」
「いや…それより、ビードブードが臨時で隊長になるとは、思わなかったな」
「まぁ、俺が何とかフォローしてやらねぇと、部隊内は大変だぜ」
苦笑いしながら、答えるビードブードにゼロは、かつて彼とエックスの戦いを思い出した。
―ゼ…ゼロ。無事、みたいだね…。
―エックス!?あのバグホールを受け止めたのかよ!?
―何で、俺を殺さないんだ!?
―お…俺は、同僚を…同じレプリロイドを倒して行くことが、どれほど重く、罪深い事かを、忘れた事は無い。今でも、こうして君と戦うのも、怖さをこらえて闘っているんだ。でなければ、死んでいった者に申し訳ないから…。
―だから、あんたは侮られるんだよ!兄貴の事を俺は忘れたわけじゃない!
―わ…分かっているさ。どんな性格であっても、大事な兄弟だろ?それなのに俺は倒してしまった…その重さは忘れていないさ。それにビードブード。俺はね臆病なんだ…。でも、闘うんだ。罪を負う事が多くても、何者にも代え難い笑顔と平和…苦しみへの解放…。そのために俺は、闘うんだ。
―エックス…。
―君だって、辛さと憎しみの狭間で俺を倒そうとしている。違うのか?君の兄を殺めた俺が言うのは馬鹿げていると思うけど、君を苦しみから解放したい。そして、ちゃんと生きていけるようにする。
―すまない…。時間をくれないか?整理をしたいんだ…。
―…分かった。俺は待っているから。答えを…。
―エックス、良いのか?倒さなくても?
―俺は、ビードブードを信じるさ。彼は俺よりも強いから…。
「そういえば、エックスの休暇の真相だが、何か知っているか?」
「何だよ、藪から棒に…」
「爺さんは、『振り返れば分かるわい』で答えねぇし…」
本気で理解できていないゼロに、ビードブードは呆れながらも答えた。
「前々から、俺やトウコが考えていた事だ。それ以上の答えはない」
「そうか…って、それだけじゃねぇだろ」
やっぱり、鋭いなぁ…と思いつつも、そこからは真剣な表情で話すことにした。
「いやマジ話、あの休暇はエックスの気持ちを整理付けるためにある。後は…たまった疲労だな」
「それと、エックスさんは隊長がいなくなった時は、酷く悲しんでいましたよ。少しは察してくださいね。大事な親友なんですから」
かつては誰も相手にされず、軽蔑され、孤独であったエックスが、今は心配してくれる仲間がいる事に嬉しさを隠せない反面、この一件で自分がしでかした単独行動が傷つける事となり、自分がエックスにとって…トウコにもとって如何に重要であるかを考え直す事となった。
「ま、考え直すのも学習ってやつだろうな」
「あ、イーグリードさん。トウコさんの言葉ですね」
「まぁな。じゃあ、俺は戻るぜ」
オストリーグでも引っ張り出して、おちょくるか…と、酷いことを言いながらイーグリードは、休憩所を後にした。順を追って、ホーネックもビードブードも去っていった。
「俺も出撃準備に取り掛かるか…次は、ジャングルだな」
同僚か…さっきの会話ではないが、真剣に取り掛かるほか無いと自分に言い聞かせるゼロであった。
『あとがき』
これは『雪の空、澄んだ意志』のゼロサイドとでも…。その頃のゼロは…と言うのが、軸です。因みに倒した順番は…、
ビストレオ(X)⇒キバトドス(X)⇒クジャッカー(Z)⇒スパイダス(Z)…となっとります。
う~ん、書くって難しい…。と言うかヘタレすぎですよね、これじゃあ…。ハァ。何だか色んなボス出しすぎたでしょうか…。懐かしさに浸ってもらったのなら、それはそれで嬉しいです。それにしても、イーグリードは酷いことを…。オイオイですね。書いておいて難ですが。
因みに2作とも、タイトルの雰囲気の元ネタは『十二国記』です。「月の影、影の海」と言う感じです。
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