十六夜さんからのリクエスト「ギャラクシーフォースでドレッドロックの話」です。十六夜さんのみお持ち帰り可能です。
陽だまり
それは今となってはもう遠い昔の話…。
「君たち二人をサイバトロン軍総司令官・副司令官に任命する」
こうして、この二人は史上最年少総司令官・副司令官として当初、騒がれることになった。
マスターガルバトロンとの戦いが終わり、1週間が経過した。ボロボロだったギャラクシーコンボイも順調に回復し、日常生活を送る分には問題なかった(ファストガンナーが言うには、そろそろ職務復帰可能らしい)。その間ドレッドロックが代理で司令官となり、その指揮の元、セイバートロン星の復興作業は順調に進んでいた。作業もひと段落つき、ドレッドロックは休憩していた。
「ギガロニアの建設技術は本当にすごいな…」
「どうやら順調に作業は進んでいるみたいだね」
「総司令官…はい。ですが、もう大丈夫なのですか?」
「ああ。職務復帰も2、3日したらできると、医者のお墨付きももらっている」
心配そうに尋ねるドレッドロックに対してギャラクシーコンボイは笑って答えた。こういう心配性が過ぎる所はあるが、それだけ仲間の気遣いを忘れない優しさあふれる性格だと知っているので、笑うのだ。そして亡き友ベクタープライムと彼の支えがあって、こうして総司令官としてたっていられると。そんな事を思っていると、ふと昔の事を思い出した。
「そういえば、私も君も同時にこの役職に就任されたな」
「そうでしたね。流石に驚きましたが…」
「君は偶に荒い口調になっていたね。俺とも言っていたし」
「そ、それは言わないでください…」
タブレットで顔を隠すが照れているのが一発で分かる。ドレッドロックは大人しい事には変わりないが、感情任せになると荒々しくなり一人称も俺に変わる性格だった。それを知っているのはガードシェルと自分、そして衝突の多かったソニックボンバー位か。
「もうあんな口調にはなりませんって…」
「でも基本的に大人しいのだから私は特に構わないけどな」
―今から何年も前、遠い昔。ギャラクシーコンボイもドレッドロックも一兵士にすぎなかった頃。折り合いの悪い上司が除隊されてから数か月経過したある日の事だった。ドレッドロックはその上官の暴力からギャラクシーコンボイをいつもかばっていたため、けがが絶えなかった。重なっていたためけがは酷かったものの、事務系の仕事ができる所まで回復していた。周囲は二人の行動が除隊につながったということで歓迎し、また当時の司令官も責任を感じており、謝罪したのだった。
「ドレッドロック、あんまり無理をしたらダメだからな」
「先輩…。ですけど…」
「いくら回復してきたと言っても適度な休息を取らなければ余計体を痛めるだけだ。良いね?」
そういわれればドレッドロックも引き下がるほかなかった。この先輩こそ後のギャラクシーコンボイなのだ。まだオライオンという名前で年の差はそこまでないのだが、少し早く入隊していたことと彼の方が年上なので、ドレッドロックは先輩と呼んでいた。
「さ、今日は大人しくしている事だ」
「は、はい…」
と言われてドレッドロックはしぶしぶ従い、部屋へ戻ろうとした時、地位の高そうなトランスフォーマーがやってきた。
「あ、丁度よかった。君たちにこれを渡そうと思っていたんだ」
と何やら重要そうな通知を二人に渡し、早速中身を見た。その内容に二人は驚くほかなかった。
「あの、これは…」
「君たち二人をサイバトロン軍総司令官・副司令官に任命する」
いきなりの通知に何か言いたくなったオライオンだが、そんな暇を与えてもらえず…、
「明日、司令室へ。そして任命式は1週間後。以上」
と言い残して、彼は去ってしまった。通知内容はというと…、
「あの先輩はどちらでしたか?」
「サイバトロン軍総司令官の辞令。君は…」
「副司令官の辞令ですね。先輩が総司令官ですし」
若年も良い所な自分たちをこんな重要な役職に就けていいのか、と不安を隠せなかったが、とにかく話は明日になればわかるだろう、ということで今日は仕事を切り上げた。
翌日。二人は司令室にいた。司令官は厳格そうに思えたが、かなり気さくな性格で緊張こそすれど、表情がこわばることはなかった。副司令も緊張しなくていい、と笑いながら招いた。
「オライオン、君は本日をもってサイバトロン軍総司令官に任命する。名前もギャラクシーコンボイと改める」
「はい!」
「ドレッドロック、君はサイバトロン軍副司令官に任命する」
「はい!」
二人は口をそろえて役職に恥じぬよう、誠心誠意をもってサイバトロン軍の戦士として戦い続けることを司令官の前で誓ったが、司令官は笑いながら、そこまで固くならず自分たちの歩調でやるのが良い、と返した。この言葉は本当にあたたかくて嬉しかった。
「取りあえず任命式の前だが、ここにいるメンツでポーカーでも…」
「司令官。それはオフの時にしましょうね」
ただのカードゲーム感覚でやるのに―、と司令官がブウたれれば副司令はチップをかけずとも弁えてください、と一刀両断。この様子にギャラクシーコンボイもドレッドロックも笑うしかなかった。
「あれから何年たったことか」
「そうですね。それに私たちは周囲に散々年少司令官・副司令と騒がれましたからね。色々となれない所が多くて大変でしたよ」
「だが、支えてくれる仲間がいた。だからここまで頑張れたと思わないか?」
とギャラクシーコンボイは毅然と答えれば、ドレッドロックは笑顔でうなずいた。ギャラクシーコンボイはベクタープライムやリーダーたちと仲良くなったようにドレッドロックも地球組やファングウルフと親しくなったと思う。とくにライブコンボイ達は移民トランスフォーマーの事もあり、話し合うことは多かった。オートボルトは気さくで察しが良く、ライブコンボイは柔和で人当たりが良い。リーダー相手には失礼のないようにしようとしているが、彼が相手だと不思議と口調が砕けるのだ。
「誰だって不完全だから、こうして補い合うのが大事だからね」
「そうでしたね。だから若年だと言われても頑張れた。何かあったときは互いにフォローしていましたからね」
昔の失敗談をあれこれ思い出せば、もう笑いの渦。それもまた今の自分たちを築き上げる大切な経験だ。任命式が終わって前の司令官と副司令の4人でポーカーやったとき、ギャラクシーコンボイは惨敗だったのにドレッドロックはそれなりに強かった。マスクで表情が分かりづらいということも大きいと思うが。
「元気になりましたら、どうです?二人で久しぶりにポーカーしませんか?」
「それは名案だ。チップは?」
「有りですよ。二人しかいませんからチップの有無は別に問題ないと思います」
とポーカー談義をしているとガードシェルがやってきた。
「何を話しているかと思えば…。二人だけはずるい、私も加えてください」
「分かった。なら3人で」
というものの、甘くなかった。全員こっちに来てしまった。
「俺達も一緒です!」
「副司令って結構ラフな所あったんですね」
「私もたまにはいいと思う」
「俺ルール分からん」
「何が古参組限定みてーなことを!全員だ全員!!問答無用だぜ!」
みんなが遊びたがっているのを察してギャラクシーコンボイもドレッドロックも全員で復興作業が終わったらパーティを開いてその〆にポーカー大会をやる、と案を出せば全員同意した。ソニックボンバーとエクシゲイザーは何だかやる気満々、ライブコンボイやファストガンナーは駆け引きについて何やら話し合っていた。
「賑やかになりそうだな。ポーカー大会」
「それも良いですけど、いずれ二人でやりましょうね」
「もちろんさ。今度は勝つ」
休憩室の賑やかさとは関係なく、今日も今日で日差しは温かく、また若き司令官と副司令のまなざしも穏やかだった。
オマケ
ソニ「何が二人だけでポーカーだよ」
エクシ「仲良いんだし、別に可笑しくないだろ」
バク「やきもち?」
ソニ「そうじゃねえ!」
ライブ「じゃあ何?」
ソニ「俺だって古いの省かれた…」
バク「やきもちですよね、それ」
ガド「全くだ」
後書き
本編51話と52話の間です。GF初のSSがあの子供化だったので、ドレッドロックはちゃんと青年です(笑)。ギャラクシーコンボイとの何気ない会話です。ドレッドロックは合間塗って総司令官のお見舞いに行っています。マメです。
ベク様とは違うけど二人には絆はあったと思います。でなきゃ、あんな大役任せられない。総司令官の隣にはベク様とドレがいないと寂しーよー(泣)。49話ラストのドレは健気すぎて泣きそうになった。あの一生懸命な所が好き。
リクエスト有難うございました。
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