『失う命,償いの命』
「くそ…本体どころか、エックスを救い出せないぜ」
容赦ないアイリスの攻撃に、攻撃を与えられないゼロ。大体、弱点の目処はついているが、近づけないで居る為、苦戦していた。そんな中、急にアイリスは止まった。
「い…痛いの…ここ…ろがい…たいの…助…け…て…」
「…アイリス…お前を救ってみせる…復讐の亡霊からな!」
止まった事を好機に、八面体のコアを破壊。そして、アイリスを強化させた機体も脆くも崩れ去ったのである。そのアイリスを受け止めるゼロ。
「アイリス!しっかりしろ!」
「ゼロ…。あれ?私…その…」
「良いんだ。お前には…酷く悲しい思いをさせてしまった…俺の責任だ」
「違うの…。エックスの事…」
すると、アイリスはワクチンチップと思しき物を腕から取り出した。ゼロに支えられつつ、アイリスはエックスを治療した。アイリスは泣きそうな声で、何度も「ごめんなさい」と言いながら治した。
「あんな奴の…口車に…乗ったのが間違…いだった…わ…」
「奴?どんな奴だった?」
「フ…ードで…分からなかったけど、低くて…凄く不気味に笑っていたわ」
「そうか…助かった…アイリス…」
「ううん…エックス…関係な…いのに…巻き込ま…せた償…い…だか…ら…」
そう優しげな声で告げて、アイリスは息を引き取った。そしてゼロは、自分の内に秘めていた何かが目覚めたのを実感した。
「…あれ?何、このアーマー…黒い…っ!ア…アイリス?」
目が覚めれば、アイリスしか居なかった。緩慢な足取りで立ち上がり、エックスは彼女の生存確認をした…が、既に事切れていた。このままに出来ないと想い、自分が乗った船へ乗せようと抱えようとした瞬間、トウコから通信が入った。
『エックス、大変よ!』
「トウコ、どうしたの?」
『ゼロが暴れているみたいなの!』
突然の通信内容に、驚きを隠せないエックス。だが、冷静になり返答した。
「俺がゼロを止める。それで、トウコ…頼みたい事が…」
『何?』
「アイリスをお願い…亡くなっているけど、放っておけないから…」
『分かった。そっちに向かう』
トウコから基地内の地図のデータを送信され、彼女が来てから、エックスはゼロの居る場所…ジェネラルのところへ急いだ。道は分かった。ゼロが進んでいった爪あとが残っていた。エックスは、この無残な光景に負けず、進んでいき、遂にたどり着いた…。そこには、ボロボロのジェネラルと無傷のゼロが居たのだ。
「ゼロ!これは…」
「エックスか…こいつが蜂起しなきゃ、あいつら死なずに済んだのに…な。そしてお前も、あんなにボロボロに成らずに済んだ」
「何言っているの?だからって、ここでジェネラル殺しても戻る事は無いじゃないか」
エックスは自分を見失っている親友を必死で止めようとするが、全く聞く耳を持ってくれなかった。
「お前と違って俺には、こうするしか出来ない悲しい奴なんだよ!」
ゼロはジェネラルに切りかかり、ジェネラル自体は全てを受け入れる覚悟で鎮座していたが、予想外の結果が待っていた。そう、エックスがジェネラルを庇ったのである。怪我をものともせずに…。
「どけ!でなければ、お前でも容赦しない!」
「駄目だ、ゼロ!それじゃあ、アイリスが悲しむ!俺もトウコも…皆も…ここで俺が死んで、アイリスも死んだのに、ゼロは辛くないの!?そうまでして、ジェネラルを、倒して何の意味があるの!?」
「お前に何が分かる!好きだった女を殺した苦しさが!」
「大事な人を失った苦しさが分かるからこそ、君を心配しているんだ!俺も君が死んだとき、丁度今の君と同じ様に暴れまわったんだ」
その言葉で、ハッと我に返るゼロ。自分が聞いていなかった事実を聞かされ、驚くばかりであった。すると攻撃の手を緩め、しっかりとセイバーを収めた。
「俺ね…怖くて怖くて仕方なかったんだ。君を失ったとき。そうしたらね、急に頭痛がしたの。その後は、酷かった…容赦なく敵を殺していったんだ…」
「…」
ゼロは黙って聞いた。そしてエックスは続けた。
「でもね、ゼロの声が聞こえたんだ。あの時は、トウコが録音した声で正気に戻ったけど…。何て言えば良いのか、俺にも分からない。それでも、これは言うよ、ゼロ。もう、復讐なんて考えないで…頼むから…」
「…すまねぇ…エックス…ジェネラル…あんたには、悪いことをしたな」
「私は良いのだ。既に罪を受ける覚悟は出来て…」
と、そのとき、揺れが起こった…。兵器が発動したのである。
「ジェネラル!これは…」
「私にも分からぬ…誰が…」
ゼロとジェネラルは狼狽する一方で、エックスは呟いた。
「シグマ…あいつしか居ないよ…ゼロ、行こう」
「そうだな、奴との決着をつけねぇとな」
「…今から、近道を教える…。そして…頼む…シグマを…私が頼むのも変な話だな」
「いいえ。有難う、ジェネラル。じゃあ、俺たちは進みます」
「在るべき道へ」
2人の最強ハンターが導通りに進んだ。ジェネラルは、2人が見えなくなった頃を見て、願い、本音を漏らした。
「エックス…君の涙、そして心…我らレプリロイドの道を拓く鍵かもな…。それに比べ私は血と犠牲を増やしただけではないか…なんと言うことだ」
「なら、考えなさい。やるべき道を」
天井が突然、空いてしまい、そこからトウコが出てきた。
「貴方に心が在るなら、償う心が在るなら、やる事を考えましょう」
「君は…」
「黒幕なら2人が倒します。私たちは、兵器を止める策を考えましょう」
「うむ…」
そして、シグマの死闘が終わった後、総帥は自分のボディを使って兵器を止める…彼は心に準じて、散っていった。
『あとがき』
す…凄く疲れました…。腕痛いです。
『飲まれた黒,光を失った優しき戦士』の続きです。まぁ『X4』は題材だけは、面白くて話の書き甲斐在るから良いけど、ストーリーが悲惨だからなぁ…。後はエックスの出番。これ、凄く不満だった…。それは置いといて、如何でしたか?あの台詞は、あえて外しました。と言うのも私は、「エックス主軸」なもので…(かと言って、書かないのも凄い勇気)。何と言うか、ゼロのことを本気で心配していて理解しているエックス、目の前の事で混乱してしまったゼロ…それが出したかった。出せていれば良いのですが…。
それでは、また何かあれば書くかもしれません。ではでは。
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